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アニコム損保、イヌのリンパ腫の治療効果を予測する新しい手法を開発

アニコム損保は、国立大学法人北海道大学との共同研究(以下本研究)で、DNAのメチル化解析を通じてイヌの多中心型の高悪性度B細胞性リンパ腫の治療効果の予後を推定することに成功した。本研究の成果は、米国獣医内科学会(ACVIM)が発行する『Journalof Veterinary Internal Medicine』に12月19日にオンライン公開された。なお、本研究成果により得られた検査技術は特許出願中で、一部の動物病院向けに検査受託も開始されている。
■本研究の概要
多中心型の高悪性度B細胞性リンパ腫(MHGL:Multicentric High-Grade B-cell Lymphoma)はイヌにおいて最も一般的なリンパ腫で、リンパ腫の80%以上とされている。この腫瘍の標準的な治療法として、「CHOP療法」と呼ばれる多剤併用化学療法が広く用いられている。一般的にCHOP療法によって生存期間は伸びるが、再発も多く見られている。これまでの研究では、CHOP療法による予後を予測するために、WHOの臨床分類や貧血の状態の観察が行われてきたが、いずれも決定的ではなく、予後の予測精度は低い状況にあることが課題となっていた。
そこで本研究では、DNAのメチル化に着目した。DNAのメチル化はDNAの化学修飾の一つで、タンパク質を生産する遺伝子の発現を制御していることが知られている。細胞の様々な働きに関与するため、ヒトの医療においても大腸がんのスクリーニング検査などに使用され始めている。MHGLの治療の予後にもDNAメチル化が関与している可能性があると考え、DNAのメチル化解析により、MHGLの予後と関連するメチル化部位を調べた。本研究では次の2段階で研究を行った。
①候補となるメチル化部位の絞り込み
MHGLと診断され、CHOP療法で治療された試験グループのイヌ24頭に対し、ゲノム全体のメチル化を調べて候補となるメチル化部位を絞り込んだ。ここでは、デジタル制限酵素メチル化分析(DREAM)を使用したゲノム全域のDNAメチル化分析を実行し、候補となるメチル化されたCpG部位(DMC※2)の中から1,371のCpG部位を特定した。その後の階層的クラスタリング解析により、試験グループ内で予後が良好なグループが特定された(生存期間中央値〔MST:Median Survival Time〕=463日vs107日、p=0.0067)。その後、FAM213A(DMC-F)およびPHLPP1(DMC-P)の遺伝子に近いDMCが、最終的な候補として選択された。
※2:DNAのメチル化レベルが、異なる条件やグループ間で統計的に有意な差異を示すCpG部位(CとGの2塩基が連続して並ぶDNAの領域)。
②候補となったメチル化部位とMHGLとの関連性調査
候補となった2つのDMCに対して、パイロシーケンス法を用いたイヌ100頭の検証を行った結果、メチル化レベルDMC-F<40%かつDMC-P<10%のグループは、予後が良好であることが示された(MST=697日vs299日、p=0.0088)。本研究から、MHGLに対するCHOP療法の予後予測は、これら2つの部位のメチル化レベルの解析によって可能となることが示された。
本技術は、イヌのMHGLの治療方針の決定や飼い主様へのインフォームドコンセントに役立つことが期待される。なお、本技術は特許出願中であり(仮出願番号63/287,534)、すでに本技術を使用した検査受託を開始している。
今後も同社グループでは、さまざまな研究を通じて獣医療の発展と動物福祉の向上に向けた取り組みを進めていく。

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