損保協会、損保各社に共有の「自動車保険の等級訂正を円滑に進めるための方策」の概要を発表
損保協会は、ビッグモーター社(株式会社ビッグモーター、株式会社ビーエムホールディングス、株式会社ビーエムハナテン)による保険金不正請求に対し、現在、業界として被害に遭われたお客さまの被害回復や再発防止策など各種課題の検討を進めている。
今般、当該課題の一つである「自動車保険の等級訂正を円滑に進めるための方策」について、対応を整理し会員会社に共有した。概要は以下の通りである。
1.検討事項の概要
お客様が等級訂正の手続きを円滑に行うことができるよう、「継続契約が他の保険会社に移行しており、複数の保険会社をまたいで等級訂正を行う必要がある場合」の対応方法等について、整理・検討を進めていた。
2.継続契約が複数の保険会社をまたぐ場合の一般的な等級訂正の流れ
(1)ビッグモーター社による不正請求が判明した場合は、当時保険金を支払った保険会社(A社)が、「不正請求があった事実」と「本来の修理費(不正がなかった場合にA社が支払うはずだった保険金の額)」をお客様に案内する。
(2)「本来の修理費(不正がなかった場合にA社が支払うはずだった保険金の額)」と「保険金を請求することで等級がダウンした継続契約(B、C、D社での契約)において保険金請求をしなかった場合の差額保険料」を比較して、お客様が保険金の請求を取り下げると判断される場合は、「支払済の保険金」をお客様から当時保険金を支払った保険会社(A社)に返還し、継続契約の等級を訂正することに伴い発生する「差額保険料」を各保険会社(B、C、D社)からお客様に返金する。
このように、従来は、「保険金を請求することで等級がダウンした継続契約の差額保険料」をお客様自身で継続契約の各保険会社(B、C、D社)に確認する必要があった。
3.自動車保険の等級訂正を円滑に進めるための方策
(1)概要
お客様の負担を軽減するため、当時保険金を支払った保険会社(A社)がお客様に代わって他の保険会社(B、C、D社)に対して、保険金の請求を取り下げた場合の保険料等の情報を取得し案内する方法(以下、本方策という。)を検討した。
また、本方策を利用する場合に、各社共通で必要になると考えられる事務処理の考え方(標準的な事務フロー・標準フォーマット)や本件対応に関する保険会社間の連絡窓口を損保協会で整理し、会員会社に共有した。
(2)検討の背景等
通常、等級訂正の必要が生じた場合は、各保険会社が個別に対応しているが、今回は各保険会社において過去複数年にわたって一定数の契約を等級訂正することが想定されるため、手続きが円滑に進むよう、損保協会において考え方を整理した。本方策により、以下の効果が得られるものと考えている。
ア.お客様の負担軽減
お客様に代わって、保険会社が保険料確認の手続き等を進めることにより、お客様の負担が軽減される。
イ.必要な手続きの明確化
等級訂正に必要な手続きが明確化され、お客様や代理店等にとって、対応方法が分かりやすくなる。
ウ.確認作業等の迅速化
保険会社間で連携する際の窓口を整理・共有することで、保険会社間の確認作業がスムーズになり、手続きの迅速化が期待できる。
本方策の整理に当たっては、お客様情報を他社から入手することに関する個人情報保護法の問題等を考慮する必要や、各社で異なる既存の実務を踏まえたうえで実施できる方法を検討する必要があった。こうした点に対応するため、お客様に代わって保険会社が対応する際に「お客様情報を取得するための同意やお客様の契約を特定するための情報の取得方法等」を整理するなど、一定の要件を整備した。
(3)各保険会社における今後の対応
今回整理した内容をもとに、会員会社において実務的な対応を整理し、準備ができた会社から順次、複数の保険会社をまたいだ契約の等級訂正対応を進めていく予定である。
自動車保険・共済を取扱う非会員の保険会社や共済団体にも、本取組みへの連携をはたらきかけている。
その他の検討課題についても引き続き検討を進め、業界としての取組みの実効性を高めていく。