新日本保険新聞社・シンニチ保険WEB

損保ジャパン、EV電池の品質保証サービス事業化に向けた実証を開始

損保ジャパンと、株式会社日本総合研究所(以下「日本総研」)は、BACEコンソーシアム※1(以下「本コンソーシアム」)の活動において、中古EVの流通促進に向けて、中古EV電池の品質保証を行うサービス(以下「本サービス」)の事業化を検討するにあたり、電池診断装置の開発・販売を行っているゴイク電池株式会社、電気計測器の開発を行っている日置電機 株式会社とともに、国内の大手中古自動車流通事業者、大手ディーラー、大手中古販売店をパートナーとした検証試験(以下「本試験」)を2022年11月から開始した。本試験は、本サービスのための基礎データの収集や車両評価手法の確立等を目的に、メーカー横断の複数車種数百台を対象とする大規模なものとなる。
本コンソーシアムでは、これまで中国にてEV電池のリユース利用の事業開発を先行して進めており※2、※3、本試験において、EV電池の価値顕在化と流通を行うことで、国内における中古EV利用、電池リユース、リサイクルをつなぐサーキュラーエコノミーのバリューチェーン構築の第一歩とする。
1.目的・背景
EVはカーボンニュートラルとグリーン成長戦略の主役の一つとして大きく期待されている。しかしながら、日本は、EVの普及では世界に大きく遅れを取っており、2021年の世界のEV普及販売台数は660万台(中国330万台、欧州230万台、米国63万台)に対して、日本は2万台程度にとどまっている。
普及が進まない主な理由の一つは、EVの充電ステーションが少ないなどの利用上の制約、航続距離が短く、エアコンなどの使用状況に影響を受けるなど、電池の性能に対する不安である。電池の品質に対する不安は、過去の使用状況が分からない中古EVではさらに大きくなる。この結果、中古EVは適正な価値評価がなされず、中古市場が低迷している。こうした中古の値崩れは、新車の普及の阻害要因にもなっていた。
中古EVを適正に評価するには、中古販売などの現場で利用可能な短時間かつ幅広い電池に対応できる高速診断技術を用いる必要がある。しかし、中古EVは利用状態によって電池の品質が異なり、計測現場の環境によって精度に影響が発生するため、それらに対応できる適切な評価手法が求められてきた。
従来、EV電池の品質評価には、EVから取り外して充放電する必要があり、計測に1日程度かかるため、中古販売の現場では実施が難しい状況だった。その結果、走行距離や年式などから推定せざるを得ず、適切な客観評価ができないという課題があった。また、近年では、短時間計測する技術が複数開発され実用化されつつあるが、診断だけでなく電池の品質保証までを行わないとユーザーは安心して利用できないという課題もあった。
このような様々な課題を解決すべく、本コンソーシアムでは、これまでに、電池の品質を短時間で推定する複数の診断技術の検証試験を実施しており、2022年11月からは中古EV電池の品質評価を行う際の診断技術の活用方法の検証を行うとともに、様々な劣化状態のEV電池を評価することで、保証のための基礎データを収集し、車両評価手法を確立することを目的とし本試験を開始した。
2.本コンソーシアムが構想する中古EVの流通促進サービス
本コンソーシアムでは、電池を取り外さず1分以内で高速計測するだけでなく、中古車販売のオペレーションに負担をかけることなく、精度の高い電池評価ができるシステムサービスを提供することを目指している。また、先端的な複数の高速診断技術を用いて評価することで、電池や計測状況にあった診断技術を活用でき、顧客ニーズに沿った各種の評価を行う。さらに、診断評価だけでなく、診断結果に従って電池を保証することで、ユーザーが安心して利用できるようになり、中古EVの適正価値を顕在化することも可能となる。
本コンソーシアムが構想する事業は、診断技術を用いて中古EVやリユース電池の評価を行うが、診断技術販売を行うことが目的ではなく、多くの診断技術を持つ事業者と連携して、電池循環市場が分断することのないように幅広い種類の電池を横断的に診断評価することで、中古EV、リユース電池、電池資源の評価と価値顕在化、保証、流通を促進する場を形成することを目的としている。
また、EV電池の技術開発は日進月歩で、全固体電池などのように世界中で、様々な電池が開発され、それに応じた診断技術が今後も多数開発されることになる。中古EVを客観的に評価して、高付加価値で流通させたい事業者の方々にとって、こうした複雑化・高度化する電池の評価をその時点で最適な診断技術で評価することが最も使いやすいものになる。これにより、ユーザーである、中古車販売、ディーラー、リース等の事業者の方々に、各種の診断技術を一括で提供して、電池に依存せずに診断評価を行う市場横断的な流通プラットフォームを形成していく。これにより、中古EVの健全な市場を構築し、EV購入者が安心して新車EVを購入できるようにすることで、EV市場自体の発展に貢献することを目指す。
現在、日本では需要が低いこともあり、中古EVの8割程度が海外輸出されている。こうした中古車両を国内で利用することで中古車市場の拡大が可能になる。また、中古EVの国内利用促進は、国内での資源確保の面でも有効である。中古EVの診断評価・保証サービスは、国内での中古流通市場を拡大するとともに、国内での電池のリユース、リサイクルを促進し、資源の国内循環の拡大にも貢献する。
3.今後について
本コンソーシアムでは、EVでの利用からリユース、リサイクル、そして再生材料として利用される段階に至る循環市場の各段階にわたってEV電池の品質管理を行い、得られた価値情報を循環市場全体で流通させる本サービスの提供を目指している。
2022年度中に幅広い中古車販売、ディーラー、リース等の事業者の方々と本試験を進め、保証サービスの手法に見通しを立てることで、2023年度には、本サービスの事業立上げを目指して、関係者の方々との協働を推進していく。
※1 BACEコンソーシアム(Battery Circular Ecosystemコンソーシアム)
日本の先進診断技術開発および循環市場のエコシステムを形成する企業による事業検討のコンソ―シアムである。多数の先進診断技術を統合利用可能なシステムを構築し、様々な電池の診断評価をワンストップで実施可能とするとともに、信頼性ある診断手法で第三者的に電池の個別価値を評価し、ブロックチェーンを用いた信頼性高い循環流通市場を形成することで、他に類のない電池循環エコシステムの中核機能の形成を目指す。
これにより、①EVの中古売買時の品質明確化によるリセールバリュー向上、②リユース利用時の品質向上、高信頼化によるリユース電池の市場拡大、③中古販売、整備、解体、リユースなど分散するバリューチェーン関係者による電池流通情報の共通基盤の構築と信頼性向上、④電池のCO2排出量とCO2削減効果の算定、を行うことで電池の脱炭素価値を向上させる業界横断的なサービス事業を創出する診断と電池価値流通のプラットフォームの実現を図る。
【ニュースリリース/2020年10月16日】車載電池の循環利用モデルに関するコンソーシアムを設立
https://www.jri.co.jp/company/release/2020/1016-1/
※2【ニュースリリース/2021年7月15日】EV電池の残存価値診断技術の試験実施について
https://www.jri.co.jp/company/release/2021/0715/
※3【ニュースリリース/2022年3月31日】EV電池の残存価値評価サービス事業化に向けた協定締結
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=102307

関連記事(保険業界ニュース)

損保

SOMPOホールディングス、損保ジャパン、「東京レインボープライド2024」に協賛・参加

損保

損保ジャパン子会社Mysurance、【日本初】新車購入者と販売店の相互扶助による新保険制度「愛車PROTECTトヨタのミニ車両保険」を全国展開

損保

損保ジャパン、「デバンカー保険」の販売を開始

損保

損保ジャパン、将来の親の介護に備える保険「『マネーフォワードケア』はやめにそなえる介護+傷害補償」への商品提供を開始

損保

損保ジャパン、SOMPOリスク、NeUが職業ドライバーの安全運転寿命延伸に向け業務提携

損保

損保ジャパン、トライボテックスと業務提携

損保

損保ジャパン、「産学官連携によるスポーツと農業を取り入れたワーケーション」に関する研究報告

損保

損保ジャパン、【国内初】物流の2024年問題に対応した新補償開発

生損

明治安田生命、損保ジャパン、第一生命、今年も全国104万人の新小学一年生へ「黄色いワッペン」を贈呈

損保

損保ジャパン、SOMPOリスク、SOMPOビジネス、自動運転サービスの社会実装に向けたソリューションの提供開始

関連商品