SOMPOホールディングス、損保ジャパン、SOMPOリスク、保険引受業務における擬似量子コンピュータの実務利用を開始
SOMPOホールディングスと損保ジャパン、SOMPOリスク、株式会社日立製作所(以下「日立」)は、このたび、損保ジャパンの損害保険業務において、日立が開発した量子コンピュータを疑似的に再現するCMOSアニーリング※1の実務利用を開始することに合意した。保険会社の基幹業務で疑似量子コンピュータを本番適用する初のケースとなる※2。
今後、4社は、CMOSアニーリングを活用した損害保険業務のデジタルトランスフォーメーションを推進するとともに、各社の保有する多種多様なデータと技術の連携により、新たな社会価値を創造する協創活動を加速させていく。
1.背景
近年、量子・疑似量子コンピュータ技術※3に対する国際的な注目が急速に高まっており、米国、欧州、中国を中心に、諸外国においては、将来の経済・社会に大きな変革をもたらす源泉あるいは革新技術として位置づけ、研究開発投資を大幅に拡充するとともに、開発拠点形成や人材育成などの戦略的な取組みが加速させている。日本においても、官民連携の検討体が複数発足するなど、国を挙げて社会実装に向けた取組みが推進されている。
2.今回の適用範囲
4社はこれまで保険引受業務へのCMOSアニーリングの活用可能性について検証を重ね、実業務への実装にこだわり、実務上の複雑な条件のモデル化とビジネス上の課題解決にフォーカスして検討を進めてきた。具体的には、SOMPOリスクの自然災害リスク定量化技術と日立のCMOSアニーリングの活用により、損保ジャパンがお客さまからお引き受けする自然災害リスクのポートフォリオに対して、損保ジャパンで保有すべきリスク、再保険など外部移転すべきリスク、外部移転時の条件(再保険条件)、実務上考慮が必要なその他条件などをモデル化し、取り得る膨大な組み合わせからリスクテイクと安定収益を両立する条件を求める手法を開発した。さらに日立はCMOSアニーリングにおいて新たな技術革新を行い、損保ジャパンが実務レベルで必要とする大規模かつ複雑な損害保険ポートフォリオ最適化問題に対応できるようになった※4。これにより、実務利用の目途が立ったことから、2022年4月から損害保険引受業務においてCMOSアニーリングの実務利用を開始することになった。
3.各社の役割分担
会社名・役割
SOMPOホールディングス 検証の統括
損保ジャパン ビジネス要件抽出および実務プロセスへの技術実装
SOMPOリスク ビジネス要件の定式化および自然災害モデルによるリスク定量化
日立 イジングモデル定式化およびCMOSアニーリングを活用した最適
化
4.今後の展開
4社は引き続き保険引受業務に向けた技術開発とビジネス実装の両面で検討を行い、適用領域の拡大を推進していく。
また、保険引受業務に留まらず、様々な損害保険業務に対し、量子技術による損害保険業務のデジタルトランスフォーメーションを推進する。SOMPOグループが保有するリアルデータや、リスク定量化技術、保険機能、日立のデジタルソリューションLumada※5など、各社の強みとするソリューションを連携させることで、安心・安全・健康な社会の実現に向けた新たな社会価値を提供する協創の取組みを加速していく。
※1 磁性体の性質を説明するために考案されたイジングモデルを用いて組合せ最適化問題を解くために日立が開発している新型コンピュータ。
※2 4社調べ。
※3 従来型コンピュータによる計算では解決が困難な問題に対応するために開発が進められている量子コンピュータ、および量子コンピュータを疑似的に再現した技術。
※4 現行のCMOSアニーリングのスピン数では解けない大規模な問題(2200万スピン相当が必要)を、処理方式の高度化により、ハードウェアの増強なしに解くことに成功。これにより、現行の提供構成を変えることなく、より大規模な問題を解くことが可能となった。
※5 お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称。