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損保ジャパン日本興亜、自動車走行データ解析に関するAI技術を開発

損保ジャパン日本興亜と国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)革新知能統合研究センター(以下「AIPセンター」)は、交通事故予測のための共同研究の成果として、「運転データによる大規模ドライバー識別技術」と「多重比較補正を利用した統計的軌跡マイニング技術」を開発した。
1.背景
損保ジャパン日本興亜は、交通事故削減のため、スマートフォンやドライブレコーダーを用いた安全運転支援サービス『スマイリングロード』、『ポータブルスマイリングロード』および『DRIVING!』をお客さまに提供している。また、これらのサービスから収集される大量の自動車走行データを活用し、ドライバーの安全運転に資するさまざまな情報・サービスを開発・提供している。
2015年『スマイリングロード』の提供と同時に、自動車走行データ活用のための研究チームを社内に立ち上げ、機械学習技術の研究開発およびサービスへの実用化に取り組んできた。2018年3月には、機械学習技術の研究開発拠点である理研AIPセンターと共同研究を開始し、理研AIPセンター内の複数のグループと共同研究チームを組成し、研究開発を進めてきた。
本技術の開発により、従来課題となっていた、自動車走行データの形式・特性に合った柔軟で効果的な解析が可能となり、今後、お客さまに、交通事故予測や運転支援に関する高度なサービスが提供できると考えている。
また、本技術は、人工知能関連の国際会議である2019IEEEInternationalConferenceonSystems,Man,andCybernetics(SMC)※1およびACMSIGSPATIALInternationalConferenceonAdvancesinGeographicInformationSystems2019(ACMSIGSPATIAL2019)※2で発表する。
※1 10月6日からイタリア(バーリ)・※2 11月5日から米国(シカゴ)で開催
2.本技術の概要
(1)運転データによる大規模ドライバー識別技術(理研AIPセンターヒューマンコンピュテーションチーム:鹿島久嗣チームリーダー)
本技術は、スマートフォン用カーナビアプリ『ポータブルスマイリングロード』で収集された運転データをもとに、数千人規模のドライバーを対象とした大規模識別問題に機械学習を応用したものである。例えば、ドライブレコーダーを用いた法人向け運転診断では、複数のドライバーが同一車両を運転し、運転データが混在した場合、運転データのみから対象ドライバーを特定することは困難であるが、機械学習の活用により、混在した運転データをドライバーごとに効率的に分類できるようになることが期待される。
最大1万人を対象としたドライバー識別実験では、評価用の手法と比較して高い精度でドライバーを識別できることが示された。
(2)多重比較補正を利用した統計的軌跡マイニング技術(理研AIPセンターデータ駆動型生物医科学チーム:竹内一郎チームリーダー、同圧縮情報処理ユニット:田部井靖生ユニットリーダー)
TrajectoryMining(※)における統計的信頼度を評価するための新たなアプローチとして、StatisticallyDiscriminativeSub-trajectoryMining(Stat-DSM)という手法を提案した。
例えば、事故歴有ドライバーと事故歴無ドライバーのような、異なる属性を持つ2グループ間で、その移動軌跡のパターンに差異があるかを調べ、一方のグループで特徴的に発生する軌跡パターンを検出したい場合、現実に観測されたデータには観測誤差が含まれることから、計算時に統計的な評価をしながら軌跡パターンの抽出を行う必要がある。従来の手法では大規模なデータセットの計算に適用することは困難だったがStat-DSMでは、木構造と呼ばれるデータ構造に軌跡パターンを格納し、統計的推論を適用することで、大規模な実データに対する計算が可能となった。
(※)走行データをはじめとする、移動体の軌跡データを扱うための分析手法。
◆論文情報
題目:StatisticallyDiscriminativeSub-trajectoryMiningwithMultipleTestingCorrection
著者:DuyVoNguyenLe,TakutoSakuma,TaijuIshiyama,HirokiToda,KazuyaArai,MasayukiKarasuyama,YutaOkubo,
MasayukiSunaga,YasuoTabeiandIchiroTakeuchi
発表:ACMSIGSPATIALInternationalConferenceonAdvancesinGeographicInformationSystems2019(ACMSIGSPATIAL2019)
3.今後について
損保ジャパン日本興亜は、本技術の研究成果をもとに、提供する安全運転支援サービスで、事故リスク評価モデル等を支える基盤アルゴリズムとして実用化することを目指す。
損保ジャパン日本興亜および理研は、引き続き、本共同研究を通じて、現実課題を起点に機械学習技術の発展と社会実装に貢献すべく、先端情報科学に関する研究開発の体制強化を進めていく。
また、両者は共同研究の成果をもとに、安全運転に資する革新的な要素技術を搭載したサービスの提供を目指し、“事故の無い社会”の実現を支援していく。

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