東京海上日動、「カーボンクレジット創出企業向け人権リスクに関する支援メニュー」を提供開始
東京海上日動と日本工営株式会社は、東京ガス株式会社と共に、カーボンクレジット創出に関与する企業の人権尊重を目的として「カーボンクレジットの創出に関与する企業の人権尊重のためのフレームワーク」*1を策定した。
本フレームワークを基に、東京海上日動と日本工営は、プロジェクト現場における実効性のある人権配慮の取り組みを支援するため、「カーボンクレジット創出企業向け人権リスクに関する支援メニュー」の提供を開始する。
*1:国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際規範に基づき、人権への配慮を具体的に実践するための実務的なフレームワークである。
1.背景
近年、企業においては、カーボンニュートラルに関する計画を達成するための手段として、温室効果ガス(以下「GHG」)の削減努力に加えてカーボンクレジットを活用する動きが増えている。
一方で、開発途上国で実施される一部のカーボンクレジット創出プロジェクトにおいては、現地労働者の不当な待遇や地域住民の強制移住など、人権侵害が懸念されている。
カーボンクレジット創出プロジェクトにおいて問題が発覚した場合、企業はブランドイメージの毀損のみならず、プロジェクトの停止やクレジット認証が取り消しとなるリスクがあることから、環境面のみならず人権面における対応がこれまで以上に重要になっている。
しかしながら、カーボンクレジットに関する国際基準の多くはGHG吸収量の確保に重点を置いており、人権配慮に関する実務的な指針が十分に整備されていないため、プロジェクト現場における具体的な対応には課題が残されていた。
こうした課題の解決に向けて、東京海上日動と日本工営は、プロジェクト現場における人権配慮の実効性を高める支援メニューを開発した。
2.「カーボンクレジット創出企業向け人権リスクに関する支援メニュー」の概要
本支援メニューは、東京海上日動、日本工営、東京ガスの3社で共同策定した「カーボンクレジットの創出に関与する企業の人権尊重のためのフレームワーク」を基に、東京海上日動と日本工営が共同で開発したものである。
東京海上日動がカーボンクレジット関連の保険商品やサービスを通じて培ったリスクマネジメントの知見、日本工営のODA案件における環境社会配慮に関するコンサルティング実績を活かして開発された、実効性の高い支援内容である。
サービス内容は以下(1)、(2)の通りである。
(1)カーボンクレジット創出プロジェクトにおける人権リスクの評価、並びに対応策の検討
プロジェクト実施国や地域の社会状況や法制度、過去の人権侵害の事例などに照らした事前調査を実施し、現地の地域住民への負の影響がないか、現地労働者の労働条件が不当ではないか等、プロジェクトが抱える人権リスクを洗い出す。
現地調査を希望する企業に対しては、日本工営のアジア地域を中心とした世界42拠点の海外ネットワークを活用し、プロジェクト実施国の地域住民、政府関係者、現地労働者などへのヒアリングにより情報収集するとともに、ビジネスと人権に関する国連指導原則やFPIC*5等が適切に担保されているかを調査する。
*2:Free,Priorand in formed consent(FPIC)主に先住民や地域住民の権利を保護するために用いられる国際的な原則。
(2)ガバナンス・方針策定支援
カーボンクレジット創出プロジェクトに適用可能な人権方針の有無やその運用状況、地域住民や現地労働者が現地語で対応可能な救済窓口の設置状況等、カーボンクレジット創出企業におけるガバナンス体制を評価する。
必要に応じて、プロジェクトに携わる従業員における人権に関する原則の理解促進や、ガバナンス体制構築に向けた支援する。
また、プロジェクトで人権に対する配慮を継続していけるように、定期的なモニタリングや見直しが行える仕組みづくりをサポートする。
なお、本サービスの開発にあたっては、サステナビリティと人権問題に高い知見を有する蔵元左近弁護士(蔵元国際法律事務所)をはじめとした有識者らの協力を得ている。
3.今後について
東京海上日動と日本工営は、今後も蔵元国際法律事務所とともに、コンサルティング内容の実効性向上とクレジットの価値向上に向けた検討を行う。
本支援メニューの提供を通じて企業が安心してクレジットを創出できる環境整備を推進することで、カーボンニュートラルの実現に貢献していく。