東京海上日動、日本私立大学協会会員向け「役員賠償責任保険」団体制度の創設
東京海上日動と、日本私立大学協会(以下「私大協」)は、2020年4月に、改正私立学校法(同年4月1日施行)の制定を踏まえ、今後の私立大学(学校法人)の役員の負担軽減や学校法人のリスク低減並びに私立大学経営に関する危機管理の一助として役員賠償責任保険の団体制度(「私大協役員賠償責任保険制度」)を創設する。
1.背景
企業だけでなく、全国の私立大学(学校法人)の役員も経営判断のミス等で訴えられるケースが増加傾向にある。一般企業の役員に対する訴訟の賠償額が高額化する傾向もあり、企業以外の役員(理事・監事等)にも保険の需要が高まりつつあると考えられる。
また2020年4月には、学校法人のガバナンスの強化、質の向上を目的とした改正私立学校法が施行される。改正法では理事・監事の善管注意義務について規定し、これに違反して法人や第三者に損害を与えた場合に、損害賠償責任を負うことが明文化される。
役員の経営判断のミス等によって私立大学(学校法人)が損害を被った場合、役員は同法人に対して損害を賠償する義務が生じる。私大協と同社は役員の経済的・精神的な負担を軽減し、私立大学(学校法人)の安定的な経営を行うべく、新たな制度の創設を検討していた。
2.制度概要
私大協が2020年4月より団体保険制度として導入し、お申込みが可能となる。私立大学(学校法人)向けの役員賠償責任保険の団体制度としては、損害保険業界で初めてとなる。
(1)加入対象者
私大協加盟の全国約400の学校法人(任意で加入できる)。
(2)加入形態
私大協が保険契約者となり、保険に加入する私立大学(学校法人)の役員が被保険者となる。
(3)補償内容
私立大学(学校法人)の役員が、自らの業務に起因して損害賠償請求を受けた場合に、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害賠償金や争訟費用のほか、法人が負担する調査費用等を補償する。また学生や教職員からの損害賠償請求に加えて、法人自体が役員を訴える場合も補償対象としている。
<想定される訴訟事例>
①私立大学の教員が、上司からパワハラや差別発言を受けたとして、理事長に対し監督責任を問う損害賠償と教壇復帰を求める訴えを起こした。
②私立大学の教授数名が、経営者の交代で待遇が悪化したとして、旧経営者の理事に対し損害賠償を求める訴えを起こした。
③教職員の退職金用の積立金を運用していたところ、デリバティブ取引によって巨額の損失を生じさせたとして、当該学校法人が取引に関与した理事に対し損害賠償を求める訴えを起こした。