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損保ジャパン日本興亜、半導体ベースの新型コンピュータを活用した損害保険ポートフォリオ最適化に関する実証実験を開始

損保ジャパン日本興亜とSOMPOリスクマネジメント株式会社(以下「SOMPOリスク」)、株式会社日立製作所(以下「日立」)は、このたび、日立が開発した半導体ベースの新型コンピュータであるCMOSアニーリング*1の損害保険ポートフォリオ最適化*2への適用検討に合意し、本格的に実証実験を開始する。
3社は、本実証実験により、損害保険分野のビジネス課題である損害保険の保有リスクに関するポートフォリオの最適化に対するCMOSアニーリングの適用を検討し、インシュアテック*3(保険とITの融合)によるリスクコントロールの高度化を目指す。
1.背景
近年、損害保険業界においては、国内外での地震や台風など大規模な自然災害の多発により、保険金支払いが増加し、自然災害を起因とした想定を上回る損失への対応が重要となっている。
損保ジャパン日本興亜及びSOMPOリスクは、かねてより、独自に開発した自然災害工学モデル及びポートフォリオ最適化技術を用いて、再保険*4など損害保険会社が保有するリスクを外部(再保険会社など)に分散する仕組みを効率的に活用し、自然災害リスクを適正に分散させ、安定した保険運営に取り組んできた。最適化計算結果は、保険引受業務や保有リスクの管理などに活用されている。
損保ジャパン日本興亜では、近年頻発する大規模自然災害に加え、海外事業拡大などの環境変化に伴い、同時に考慮すべき(最適化対象となる)保険契約数や保険スキーム数などが拡大し、より大規模で複雑な損害保険ポートフォリオ最適化のニーズが高まっている*5。
日立が開発したCMOSアニーリングは、従来型のコンピュータと比較して、組合せ最適化問題を250倍*6高速に解くことが可能であるケースが確認されており、保険分野をはじめ大規模なポートフォリオ最適化問題が求められる金融業界への適用が期待できる。
CMOSアニーリング活用においては、対象とする最適化問題をイジングモデル*7(CMOSアニーリングで解くことができる形式)の問題に変換する定式化が必要となる。3社は2019年4月から本取り組みの事前検討として、従前の損害保険ポートフォリオ最適化手法をイジングモデルに定式化が可能かを検証してきた。事前検証の結果、定式化が可能であることを確認できたため、本実証実験に取り組むこととなった。
2.実証実験の内容
本実証実験では、CMOSアニーリングの活用により、従来型のコンピュータでは扱えない、大規模で複雑な保険条件を考慮したポートフォリオ最適化の実現可能性を検証することで、日立の最先端技術を活用したリスクコントロールの実現可能性について検討する。
具体的には、従来型のコンピュータでは、月単位あるいは年単位の膨大な計算時間がかかる、大規模で複雑な保険条件を考慮した損害保険ポートフォリオ最適化問題について、CMOSアニーリングの活用により、許容計算時間内(例えば1日以内)で解くことが可能かを検証する。
3.各社の役割
・損保ジャパン日本興亜
最適化すべきポートフォリオ条件の設定
・SOMPOリスク
上記条件の最適化問題への落とし込み及び自然災害工学モデルによる推定損害額算出
・日立製作所
イジングモデル定式化及びCMOSアニーリングを活用したポートフォリオ最適化
4.今後の展開
今後、損保ジャパン日本興亜及びSOMPOリスクは、本実証実験を通じて、ポートフォリオ最適化におけるCMOSアニーリングの適用検討を進めていく。
また、日立は本取り組みをLumada*8のユースケースとし、CMOSアニーリングのさらなる性能向上と適用範囲の拡大を図っていく。
*1 CMOSアニーリング:磁性体の性質を説明するために考案されたイジングモデルを用いて組合せ最適化問題を解くために日立が開発している新型コンピュータ。
*2 ポートフォリオ最適化:損害保険会社が、自社が契約した保険だけでは地理的な偏りが生じ、自然災害発生時に損害が大きくなるリスクがあるため、他の保険会社間と保険商品を売買する再保険市場でリスク分散を図り、保険会社が自社で保有可能なリスクの範囲内で、リターン(保険引受利益)が最大となるポートフォリオを見つけること。
*3 インシュアテック:保険(Insurance)とテクノロジーを組み合わせた造語。先進のIT技術を活用し、保険に関するさまざまな手続きや業務などを効率化・高度化するアプローチで、新たなサービスの創出に期待されている。
*4 再保険:保険会社が加入者と契約した保険の責任の一部または全部を他の保険会社に移転し、リスクを分散する損害保険。保険の保険。
*5 一般的に、ポートフォリオ最適化問題は、対象とする銘柄数の増加や制約条件の複雑さによって計算時間が爆発的に増加することで知られている。本課題は損害保険ポートフォリオにも当てはまり、考慮すべき再保険スキーム数の増加に伴い計算時間が指数関数的に増加するため、従来型のコンピュータで計算可能な条件に制約があった。
*6 従来型コンピュータとしてシミュレーティッド・アニーリングと比較した結果、いくつかの組合せ最適化問題においてCMOSアニーリングは約250倍の精度を確認。
https://www.hitachi.co.jp/rd/news/topics/2019/0830.html
*7 イジングモデル:磁石などの磁性体の性質を表す統計力学上のモデルのこと。量子コンピュータなど、イジングモデルを活用した新しいコンピューティング技術に注目が集まっており、その一つとして、日立では、半導体上でイジングモデルの振る舞いを擬似的に再現し、組合せ最適化問題を効率良く解くことを可能にしたCMOSアニーリングを開発。
*8 Lumada:お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称。

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