記者のつぶやき「事業承継税制の特例を含む税制改正が成立」

森友学園問題による国会の混乱でどうなるのかと心配された平成30年度税制改正法案だが、3月28日に可決・成立し、3月31日に公布された。
生命保険販売にも影響の大きい改正項目として注目されていた「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例」関連については、租税特別措置法第七十条の七の五~八に追加された。
その四条は、第七十条の七の五(非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例)、同六(非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例)。同七(非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例)、同八(非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除の特例)となっている。
経営者の高齢化が進み、中小企業の事業承継は喫緊の問題とされ、その際に解決すべき課題のひとつとして自社株にかかる相続税・贈与税の負担が挙げられた。
その解決策として、平成21年度改正で「自社株に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」が創設されたが、ほとんど活用されていない状況にあった。数度の改正が行われ、創設時に比べれば相当使いやすくなっていたが、中小企業の事業承継のスピードをアップするためには、懸案とされてきた部分の思い切った改正が必要とされ、今回の改正では10年間の特例制度が設けられた。主な項目としては、対象株式数の上限の撤廃、効用維持要件の実質撤廃、複数承継の対象化などがある。
確かに、この特例を活用すれば、自社株にかかる税負担の問題は解決できるように思える。ただし、その恩恵を受けるのは後継者となる人である。また、計画的に利用するということになれば、贈与税の特例を使うことになるだろうが、それを使えるのは後継者が決まっており、現経営者がバトンタッチを決断できる中小企業である。後継者不在の中小企業は多い。
特例を利用した場合の取扱いの詳細については、法令では明らかでない部分もある。
これからの情報を注視したい。
(S)

アッという間にわかる・誰でもすぐわかる事業承継の本

自社株の相続税・贈与税納税猶予制度を保険提案の武器にして経営者と互角以上の立場を取る相続話法【2018年改訂版】(基本形)