日本生協連、持続可能な生産を目指し、生協と生産者で取り組む 「全国産直研究交流集会 2023」を開催
日本生協連は、2月17日(金)・18日(土)に「国内食料自給向上に生協産直はどう向き合うか?」をテーマに、「全国産直研究交流集会2023」をオンラインで開催し、産直に関わる全国の生協の役職員・組合員・生産者団体・関係企業など、121団体、約400人が参加した。
1日目の全体会では、はじめに全国産直研究会 代表委員の那須豊氏(パルシステム生活協同組合連合会)より、今回のテーマ説明と全国産直研究会の2022年度の取り組み内容について報告した。次に農業研究者の篠原信氏、株式会社農林中金総合研究所理事研究員の平澤明彦氏より基調講演を、続いて千葉北部酪農農業協同組合代表理事組合長の高橋憲二氏より実践報告があった。輸入飼料や肥料価格の高騰により食料安全保障や国内食料自給への関心が高まるなか、生協産直はこれらの問題にどう向き合い行動していくのか、あらためて考える場となった。
篠原氏は講演で、国内の食料生産体制は石油等の安定供給を前提としており、完全国内自給では3000万人程度の人口しか維持できないとの試算を示したうえで、「もし日本で食糧危機が起きれば、農村部と都市部が緊張関係に陥る可能性もある。生協のように農家と消費者の良好な関係を取り結べる存在は重要」と述べた。
平澤氏は、国内外の食料安全保障の現状と日本農業の特質を解説したうえで、持続可能な国内生産のために、農業政策としてマクロな目標を立てなくてはならないとした。生協への期待として、「生協はパイオニア的存在であり、積極的な発信、政策形成への参加を期待したい。食料安全保障は農家の問題ではなく、消費者の問題である」と述べた。
高橋氏の報告では、飼料生産コントラクターの設立や若者への技術の継承など、千葉北部酪農農業協同組合で取り組む輸入飼料に依存しない畜産経営が紹介された。そのうえでの課題として「コスト上昇分を適切に価格転嫁できなければ、食料自給率は下がる一方。安全においしい食べ物が提供できる仕組みづくりを消費者団体と一緒に考えたい」と語った。
最後に「国内食料自給向上に私たちはどう向き合うか?」をテーマにしたトークセッションを行い、講演内容を踏まえながら、食料自給率向上について議論。モデレーターは日本生協連 常務理事の二村睦子が行った。
「消費者がどういった農業にしたいかもっと提起するべき」(平澤氏)、「産直団体に入ってはじめておいしいという消費者の声を聴き、涙が出るくらいうれしかった」(高橋氏) 、「生産者と消費者の顔の見える関係が大事。対話の場が必要」(篠原氏)などの意見が出された。全国産直研究会の那須氏が「生協は昨今国内自給の問題が取り沙汰される前からこの問題に取り組んできたが、今が持続可能な生産に向けた最後のチャンスと考えている。株式会社ではない組合員組織として、生産者と消費者の理解を深めるために引き続き取り組んでいきたい」と述べ締めくくった。
2日目は、午前はテーマ別、午後は分野別の分科会を開催。テーマ別分科会の第1分科会では、生協産直の特徴である「産地交流」をオンライン形式で体験し、第2分科会では、地域をテーマにした取り組み報告を聞き、参加者と地域課題を考察。分野別の分科会では、農業・畜産・水産の各分野において、持続可能な生産に向けた報告がなされた。