記者のつぶやき「代理店手数料ポイント制度、公正取引委員会への集団申告に対し“独占禁止法上の問題とすることは困難”なため措置は採らないことを決定」

主に関西の損保代理店経営者を中心メンバーとして発足した「損害保険・代理店手数料ポイント制を考える会」は、2025年2月14日午後6時半から、大阪市中央区のエルおおさか南ホールとオンライン配信で、公取「申告」結果報告集会を開催した。
損保会社による「代理店手数料ポイント制度」の運用が独禁法上の優越的地位の濫用にあたるとして、全国の代理店経営者ら264人が2023年7月21日、公正取引委員会近畿中国四国事務所に、東京海上日動と損保ジャパンの2社を被申告者として是正を求め申告。ポイント制度の是正を求めた申告は、それまで個人ではあったものの、全国の代理店が集団で申告したのは初めてで、その判断に注目が集まっていたが、2024年12月末、公取は「これまでの情報では、独占禁止法上の問題とすることは困難」とし、措置は採らないことを決定。担当弁護士に通知があった。

報告集会では大門実紀史参議院議員が挨拶に立ち、公取からの通知には「これまでの情報では」とあり、また独禁法違反ではないと明言していないため道が断たれたわけではない。これまでやってきたことに無駄なものはなく、引き続き皆で頑張っていきたいと述べた。
続いて喜田崇之弁護士が弁護団報告を行った。残念な結果にはなったものの、ポイント制について極めて大規模、追加を含め約300名という保険代理店から公取に申告できたことで、独禁法上の問題点を整理することができ、また保険会社が大きな問題意識を持つに至ったなど、今回の申告の意義を伝えた。
また、公取はあくまでも「これまでの情報では、独占禁止法上の問題とすることは困難」と述べたに過ぎず、情勢の変化によって判断も変わり得ることを示唆した。その上で、申告を今後の運動の大きな足掛かりとし、個別の交渉を継続して行うべきであり、できれば純然たる保険代理店の利益を追求する団体を組織し、その組織が保険会社に対してポイント制について団体交渉の毛利入れができるような取組みが望ましいことを訴え、「決して悲観することなく、これからも声を上げ続ければ公正取引委員会が動く目途は十分ある。今後に向けて私も引き続き尽力していきたい」と述べた。

続いて同会の世話役の1人、松浦章・兵庫県立大客員研究員(経済学博士)が基調報告を行った。
まず、公取は被申告者2社に詳しい聴取を行ったことは間違いなく、損保会社に大きな影響を与え、また、公取の担当者も過去に例がないという規模の業界内部からの集団申告により自浄作用も働き、さらに、第二弾申告の検討、そして手数料制度を委託契約書の別途規定とするのは民法違反ではないかという視点での議論が始まるなど、申告の意義について確認した。
そして、有識者会議報告書、金融審議会等の議論の内容、また、この報告会に出席している週刊ダイヤモンド藤田章夫記者による損保会社社長へのインタビュー、東洋経済中村正毅記者による記事等を紹介し、業界の問題点を指摘しながらこれからのあるべき姿を考察。同会等で出ている意見である、保険商品別の「基準手数料」を基本とする手数料体系の導入、および最低賃金制度のような「最低保証ポイント」の設定の2つを参考にし、新たな制度を創設することについての議論を広く呼びかけたいとした。
最後に、「地域に密着した優れた代理店が将来の展望を失えば、損保会社自身もセーフティネットの役割を果たすことはできない。プロ代理店は、常に顧客との接点にいる。損保各社の政策が真に顧客の立場に立ったものかどうか、肌で感じている。だからこそ、私たちには損保業界が直面しているさまざまな問題に声を上げる権利がある。同時にその責務もある。さまざまな団体が立場や考え方の違いを超えて運動を広げている。健全な損保産業を求める持続的な運動が、間違いなく業界を変えるモメントになってきった。運動の教訓は、あきらめなければ、そして声を上げ続ければ『山は動く』。これからもともに頑張っていきましょう」と述べた。

弁護団は2025年2月10日に不服申入書を公取に提出した。ただし不服申立てが制度としてあるわけではないため、裁判での控訴、上告のようなものではなく一般的な不服申し入れという位置づけとなる。逆に言えば追加情報を加えて申告したり、何度でも申告ができるということになる。同会では上述のとおり第二弾申告も検討している。(M)