記者のつぶやき「代理店手数料ポイント制度、代理店経営者ら264人が公正取引委員会に是正を求め申告」

損保会社による「代理店手数料ポイント制度」の運用が独禁法上の優越的地位の濫用にあたるとして、全国の代理店経営者ら264人が7月21日、公正取引委員会近畿中国四国事務所に是正を求め申告した。被申告者は東京海上日動と損保ジャパンの2社。代理店手数料ポイント制度は損害保険を取扱うすべての保険会社で導入されているが、2社がシェア1位と2位であり、その保険商品を取り扱う代理店も多いことから、今回被申告者とし、しかるべき排除措置を求めた。
公取委への申告後に大阪市内で代理人の喜田崇之弁護士らによる記者会見が行われた。
手数料ポイント制度の全体的な問題点については、主に次の内容を挙げた。
①保険会社が、代理店の意見を聞くことなく、一方的にポイント制度の内容を変更することができること
②損保代理店の挙績・増収率によってポイントに差異が設けられており、
③挙績・増収率以外のポイント項目も、代理店の規模や挙績が条件となっているものが多く、小規模代理店がポイントを上げにくい内容となっていること
④挙績を維持してもポイントが減少する(手数料が減額する)内容となっていること
⑤ポイント制度の内容や項目が年々変更されるため、それに対応する負担が代理店にのしかかり、また将来を見据えた経営をすることが困難となっていること
今回の申告では、
「損保代理店と締結している業務委託契約及び代理店手数料規定により、損保代理店らの挙績・増収率を理由として、手数料ポイントを減らすことにより、代理店報酬を減額すること」と、
「代理店手数料規定を一方的に変更することができる規定」
が独禁法上の優越的な地位の濫用にあたり、正常な商慣習に照らして不当になされたものであり、しかるべき排除措置を求めたと説明した。
代理店手数料ポイント制度の是正を求めた申告は、個人ではこれまでに行われていたものの、全国の代理店が集団で申告したのは初めてとなる。
喜田弁護士は公取が判断を示す時期について、申告時に言及はなかったが早くて半年はかかるとみていると述べた。

申告は、昨年1月に主に関西の損保代理店経営者が中心となり発足した「損害保険・代理店手数料ポイント制を考える会」による働きかけをきっかけに行われた。同会の世話役の1人、松浦章・兵庫県立大客員研究員(経済学博士)は、6月30日、申告に先駆けて大阪市中央区で開催された大阪損保革新懇のシンポジウムで、
「地域に根差した多くの代理店がセーフティーネットという重要な役割を果たしている。東日本大震災でも、自らが被災しながら契約者の安否確認と保険金支払いの援助に全力をあげてきた。しかし、地域に密着した代理店がポイント制によって経営が成り立たなくなっている」と指摘。「小規模であっても、地域に密着し顧客本位で業務を遂行する代理店が安定して経営でき、また大規模代理店の場合は中長期の経営計画が立てられ、雇用の維持や新規採用が可能となるよう、何より仕事に誇りを持ち、若い世代が飛び込んでくるような業界となるように制度を見直すことは、顧客本位の代理店制度実現に向けて大きな一歩となるだろう」
と訴えた。

金融庁が6月30日に公表したモニタリングレポートでは、「Ⅳ.顧客本位の業務運営について」で、損保協会との意見交換会において、損保会社に対し、「手数料ポイント制度の設計・運用や代理店統廃合が一方的な対応とならないよう、代理店の意見をしっかり聴取する等、引き続き、丁寧な対応に努めるよう促した」とし、続けて、「顧客本位の業務運営の更なる推進に向けて、損保会社と代理店との間の課題に対する各損保会社の取組状況について、引き続き、フォローアップを行うとともに、財務局と緊密に連携して、損保会社と代理店の双方との対話を実施し、両者の円滑な連携を促していく」と明言している。
しかし、これは「民民間の委託契約に基づくものであり、当事者間でよく話し合い解決すべき事項であるが」と前置きした上である。
今回は公取への、過去に例のない規模での申告であり、どのような判断が示されるか注目される。(M)