記者のつぶやき「令和5年度税制改正法が成立! 生前贈与が変わる」

NISAの抜本的拡充と恒久化や生前贈与の改正などが盛り込まれた令和5年度税制改正法が3月28日、参院本会議で可決・成立し、別段の定めのあるものを除き、4月1日から施行となった。
相続税・贈与税関係では、相続開始前の暦年課税による贈与の加算期間を3年から7年に延長し、相続時精算課税による贈与については、暦年課税の基礎控除とは別枠で、毎年110万円の基礎控除を設ける改正が含まれており、令和6年1月1日以後の贈与から適用される。
資産家・富裕層向けの相続(税)対策における生命保険の活用においては、生前贈与が活用されていることも多いため、これまでは暦年課税を利用してきていたが、改正後はどうすればいいのかと考えている人も多いのかと思う。
相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられ、贈与税の課税価格が基礎控除額以下の場合には申告は不要であり、贈与者の相続が発生した場合も課税価格への加算はなく、暦年課税のような7年以内の加算もないのであるから、相続時精算課税による贈与を選んだ方がよさそうに思える。しかし、暦年課税と異なり、相続時精算課税では贈与者・受贈者の年齢要件とその関係が決められている。
受贈者は、贈与者の推定相続人である直系卑属および孫のうち贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者、贈与者は同1月1日において60歳以上の者でなければならない。
だから、介護等で世話になっている息子の妻や18歳未満の孫に贈与する場合には、暦年課税しか選択肢はないのである。
また、いったん相続時精算課税を選択すると、その贈与者・受贈者については暦年課税に戻ることはできない点にも留意する必要がある。この点が、これまでも利用が少なかった大きなポイントといえる。
来年に向けて、徐々に明らかになってくる実務上の取扱いも見ながら対応を検討しなければならない。(S)