記者のつぶやき「“保険本来の趣旨を逸脱する”法人保険販売」

金融庁は去る10月28日、生命保険業界に対して「法人保険の募集の在り方等について」の説明を行った。
所得税基本通達36-37(生命保険契約の権利の評価)の改正の動きに伴い、新聞や雑誌で「経営者を法人から経営者等の個人に名義変更することにより節税できる」旨の提案資料等の存在が報道された。そして、今年6月には金融庁は生命保険協会との定例意見交換会で、「保険本来の趣旨を逸脱する募集活動等が行われないよう、対応を検討したい」と伝えていた。
今回は、その現状および今後の対応についての説明があった。
法人保険の名義変更に関する商品を取り扱っている保険会社への募集管理態勢の整備状況の実態把握を進めた結果、保険本来の趣旨に照らして不自然に高い名義変更率が見られたため、「態勢整備状況のみでなく、その管理の実効性についてヒアリング等で実態把握を行う必要性がある」「保険会社に対して法人保険の募集管理についてヒアリング・モニタリングを継続していく」とした。
また、今回の所得税基本通達の改正を踏まえて、生命保険業界に対して、顧客向けの注意喚起文書『法人向け保険商品のご検討に際してご留意いただきたいこと』の改定を依頼した。
その中では、「保険料の損金算入や課税時期の繰り延べによる法人税額の圧縮を主たる目的とする保険加入や名義変更等は、税務署等からも租税回避行為と認識される可能性がある」などの追記が行われることが予定されている。
また、法人保険の募集の在り方に関する自主ガイドラインである「生命保険商品に関する適正表示ガイドライン」と「保険募集人の体制整備に関するガイドライン」の改正も検討されている。
備考において現行の「課税タイミングが変わる課税の繰り延べにすぎず」という文言は削除され、「支払保険料を損金算入しても、保険金や解約返戻金は益金に算入され、原則、課税される金額は同額となり、節税効果はない」とする改正案が示されている。(S)