記者のつぶやき「『アメとムチ』の年金制度改革法案が成立へ」
Tag:コラム
注目されていた年金制度改革関連法案(社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案)は5月16日に国会に提出され、30日に衆院で可決された。
法案の目玉のひとつとされた厚生年金の積立金を基礎年金の底上げ策に活用するという案には与党内の反発が強く、当初提出された改正案に明記されなかったため、「あんこのないあんパン」などと揶揄されたが、自・公、立憲民主3党による修正により附則に盛り込まれ、衆院を通過した。
令和7年度税制改正で話題となった確定拠出年金(企業型DC、イデコ)の拠出限度額の引き上げは、政令(施行令)事項なので含まれていないが、確定拠出年金法の改正法案成立後に政令が改正され、実現する見込みだ。なお、イデコの加入可能年齢の上限を70歳まで引き上げる改正は法律事項であり、盛り込まれている。
中小企業に影響の大きい改正としては、「被用者保険の適用拡大」があり、次のような点が盛り込まれている。
①短時間労働者の適用要件のうち賃金要件(いわゆる106万円の壁)を撤廃し、企業規模要件(現行は、従業員数51人以上のみ対象)を段階的に撤廃する
②常時5人以上使用する個人事業者はすべて被用者保険の適用事業所とする
また、残された遺族の生活保障である「遺族年金の見直し」にも注意が必要だ。遺族厚生年金の男女差解消のために、18歳未満の子のない20~50代で死別した配偶者は原則、5年間の有期給付の対象とし(現行は、30歳以上で死別した女性は無期給付)、60歳未満の男性を新たに支給対象とするといった内容になっている。
その他にも、在職老齢年金制度の見直し(支給停止基準を50万円から62万円に引き上げ)、厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の引き上げ(65万円から75万円に3年間かけて段階的に引き上げ)、子や配偶者に係る加算等の見直しなど、目が離せない改正項目が多数あり、注意が必要だ。 (S)