2025年9月5日の海外市場は、米8月雇用統計の大幅悪化を受けて典型的なリスクオフ相場となった。非農業部門雇用者数2.2万人増(予想15万人)、失業率4.3%への上昇により、FEDの9月利下げが完全織り込みとなり、年内3回利下げ確率が急上昇。USD全面安、債券ラリー、金史上最高値更新という金融緩和期待相場が展開された。
主要指標終値: USD/JPY 147.47(-1.02%), US10Y 4.08%(-7.9bp), Gold 3,593ドル(+47.93ドル), S&P500 6,481.50(-0.32%)
VIXは18.2まで上昇し、市場の不安心理の高まりを示唆。今後2週間のFOMC(9/16-17)に向けて、利下げ幅(25bpvs50bp)を巡る思惑が相場を左右する展開が予想される。
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※投資は自己責任のもとで行うようにしましょう。
主要ニュース分析
当日の核心材料
• 米8月雇用統計大幅悪化: NFP 2.2万人増で予想15万人を87%下回る歴史的ミス、失業率4.3%で4年ぶり高水準
• FED利下げ観測急拡大: FF金利先物で9月25bp利下げ100%織り込み、年内75bp利下げ確率70%超に上昇
• 金価格史上最高値更新: スポット3,600ドル突破、実質金利低下とFED独立性懸念で安全資産需要急増
• USD全面安: DXY 1,202まで下落、7/28以来の安値圏で主要通貨ペア全てでUSD売り優勢
• 原油続落: WTI 61.87ドル、OPECプラス増産観測とリセッション懸念で需給両面悪化
1. 米雇用統計ショックとFED政策転換
【重要度:★★★】【影響期間:中期】
ファンダメンタル分析
8月NFPの2.2万人増は、市場予想15万人を大幅に下回る歴史的な悪化となった。特に注目すべきは過去データの大幅下方修正で、6月が2020年以来初の雇用減少に転じた点である。これは単発の悪化ではなく、労働市場の構造的な減速を示唆している。
失業率4.3%への上昇は、サームルールの警戒水準(4.33%)に接近しており、リセッション入りの早期警告シグナルとして機能する可能性が高い。労働参加率62.7%の横ばいは、労働供給不足ではなく需要の急速な萎縮を意味する。
政策インパクト
FED政策転換の確率は以下の通り急上昇:
- 9月25bp利下げ:95% → 100%(+5pt)
- 9月50bp利下げ:5% → 12%(+7pt)
- 年内75bp利下げ:45% → 72%(+27pt)
テクニカル分析
US10Y利回りは4.16%から4.08%へ8bp低下し、7月下旬水準まで後退。2Y-10Y スプレッドは-9bpと逆イールド深化が進行。金利先物カーブは2026年末3.5%まで織り込み、中性金利(4.0-4.5%)を大幅に下回る緩和的政策の長期化を示唆。
2. 金価格の史上最高値更新とドル覇権リスク
【重要度:★★★】【影響期間:長期】
価格動向分析
金スポット価格は3,600.16ドルまで上昇し、年初来+24.8%の大幅高となった。1オンス3,500-3,600ドルレンジの上抜けは、新たな上昇トレンドの開始を示唆。RSI(14)は72.3と過熱感があるものの、月次ベースでは依然として上昇余地を残す。
構造的要因
- 実質金利低下: 10年TIPS -1.42%まで低下、金の機会コストが大幅減少
- 地政学リスク: トランプ政権のFED攻撃による中央銀行独立性懸念
- 通貨不安: ドル基軸通貨体制への構造的疑念の高まり
ゴールドマンの分析通り、FED独立性損失シナリオでは5,000ドル到達も現実的なターゲットとなる。
トレード戦略
- ロングポジション: 3,580-3,620ドルレンジでの押し目買い継続
- 利食い目標: 第一目標3,750ドル、第二目標3,900ドル
- 損切り: 3,520ドル(20MA)割れ
3. USD全面安とドル円の重要局面
【重要度:★★☆】【影響期間:短期】
USD/JPY分析
147.47での引けは、146.50-150.00の重要レンジ下方での推移継続。8/15安値146.35が直近サポートとして機能する可能性が高い。一方、BOJ政策正常化の遅れ観測により、USD/JPY の下値は限定的との見方も。
キーレベル:
- 上値抵抗: 149.00, 150.50, 152.00
- 下値支持: 146.35, 145.00, 143.75
クロス円動向
EUR/JPY 172.36、GBP/JPY 191.24と主要クロス円も軟調推移。円全面高の様相だが、日本の政治不安定化(石破首相退陣表明)により、円買い戻しは一時的に留まる可能性。
4. 原油市場とOPECプラス増産リスク
【重要度:★☆☆】【影響期間:短期】
WTI原油61.87ドルは5月以来の安値圏。サウジアラビアの市場シェア奪回戦略により、9/7 OPECプラス会合での増産合意リスクが高まっている。需給ファンダメンタルズは明確に弱気シナリオを支持。
価格見通し: 58-65ドルレンジでの軟調推移継続、55ドル割れでパニック売りリスク
市場インパクト評価
要因 | 短期(1-2週間) | 中期(1-3ヶ月) | 影響度 |
---|---|---|---|
米雇用統計悪化 | 85% | 75% | ★★★ |
FED利下げ観測 | 90% | 80% | ★★★ |
金価格高騰 | 70% | 60% | ★★☆ |
USD全面安 | 75% | 50% | ★★☆ |
原油軟調 | 60% | 45% | ★☆☆ |
総合リスクレベル: 中程度(雇用悪化による景気後退入りリスク上昇)
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トレード戦略提案
優先度A: USD売り戦略
- USD/JPY ショート
- エントリー: 148.20-148.50(リバウンド待ち)
- ターゲット: 146.50, 145.00
- ストップ: 149.50
- ポジションサイズ: 標準の150%
- DXY ショート
- エントリー: 1,205-1,210(戻り売り)
- ターゲット: 1,195, 1,185
- ストップ: 1,215
優先度B: 金ロング継続
- XAUUSD ロング
- エントリー: 3,580-3,620(押し目)
- ターゲット: 3,750, 3,900
- ストップ: 3,520
- ポジションサイズ: 標準の120%
優先度C: 債券ロング
- US10Y ショート(利回り低下)
- エントリー: 4.15-4.20%
- ターゲット: 3.95%, 3.80%
- ストップ: 4.30%
リスク管理の注意点
主要リスクファクター
- FOMCサプライズリスク: 50bp利下げ実施なら大幅な相場変動
- 雇用統計修正リスク: 過去の大幅修正は統計の信頼性を損ねる
- 地政学的緊張: 中東・ウクライナ情勢の急変可能性
- 流動性リスク: 月末・四半期末のリバランス需要
ポジション管理指針
- 最大ドローダウン: 資金の2%以内に制限
- 相関リスク: USD売りポジションの過度な集中回避
- ボラティリティ調整: VIX 20超えでポジションサイズ50%削減
注意日程
- 9/11(水): ECB理事会
- 9/12(木): 米CPI発表
- 9/16-17: FOMC会合
- 9/20(金): 日銀金融政策決定会合
現在の市場環境は、金融政策の大転換期に特有の高ボラティリティ局面にある。fundamentalsの急変に対する機動的な戦略調整が収益確保の鍵となる。
チーフアナリスト 山田
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